Excelの共有ファイルがぐちゃぐちゃになる会社に足りないもの
「このファイル、最新版はどれですか?」
「あ、それ昨日の夕方に修正したやつがあるんですけど……」
「え、私が今朝直したのと違うんですか?」
中小企業でありがちな光景です。
共有フォルダにあるExcelファイルが、いつの間にかコピーだらけになっている。ファイル名に「最終版」「最終版_修正」「最終版_修正2_田中確認済」と並んでいて、もはやどれが本当の最終版なのか誰にも分からない。
こういう状態を見て「ファイル命名ルールを決めよう」と言い出す人がいます。
気持ちは分かりますが、正直なところ、命名ルールだけでは解決しません。
なぜ命名ルールだけでは解決しないのか
先月、ある卸売業の会社でファイル管理の相談を受けました。
すでに「ファイル名に日付をつける」というルールがあったのですが、守られていませんでした。
理由を聞いてみると、こうでした。
「急いでいるときにファイル名を考えている余裕がない」
「ルールは知っているけど、コピーして修正したほうが早い」
つまり、ルールが「守れない」のではなく「守るメリットが感じられない」んですね。
忙しい現場では、わざわざ手間が増えるルールは定着しません。
やるべきは「コピーしなくていい仕組み」を作ること
ファイルがぐちゃぐちゃになる根本原因は、「各自がファイルをコピーして手元で修正する」という作業フローにあります。
だから、コピーを禁止するのではなく、コピーする必要がない状態を作るのが正解です。
具体的には、次の3つのどれかを選びます。
- クラウドストレージで同時編集:Google スプレッドシートやMicrosoft 365のExcel Online に移行する。全員が同じファイルを直接編集するので、コピーが発生しない
- マスターファイルを1つだけ決める:どうしてもデスクトップ版Excelを使うなら、「編集できるのはこの1ファイルだけ」と決めて、編集前にチャットで「今から○○ファイル触ります」と宣言するルールにする
- 入力フォームを分離する:Excelのシートを「入力用」と「集計用」に分ける。各自が入力するのは自分のシートだけで、集計シートが自動で結果をまとめる構造にする
実際に効果があった「フォルダ構造」の変え方
先ほどの卸売業の会社では、共有フォルダの構造そのものを変えました。
それまでは、こんな感じでした。
├── 売上管理.xlsx
├── 売上管理_最新.xlsx
├── 売上管理_4月.xlsx
├── 売上管理_田中修正.xlsx
├── 在庫表.xlsx
├── 在庫表(旧).xlsx
└── 在庫表_コピー.xlsx
これを、次の構造に変えました。
├── 【現行】売上管理.xlsx ←これだけが本番
├── 【現行】在庫管理.xlsx
└── _アーカイブ/
├── 2026-03_売上管理.xlsx
└── 2026-03_在庫管理.xlsx
ポイントは3つだけです。
- 本番ファイルには「【現行】」をつけて、1つしか存在しないことを明示する
- 過去のバージョンは「_アーカイブ」フォルダに月単位で保存する
- ファイル名に個人名を入れることを禁止する(「田中修正」のようなファイルは作らない)
これだけで、「どれが最新版?」という質問が翌週からゼロになりました。
大事なのは、ルールを覚えさせることではなく、見れば分かる状態を作ることです。
「ファイルを探す時間」は思っている以上に長い
ある調査では、ビジネスパーソンが1日にファイルを探す時間は平均20分とも言われています。
週に100分、月に7時間弱。年間にすると約80時間。丸々10営業日分です。
10人の会社なら、年間100営業日分の時間がファイル探しに消えている計算になります。
これは「もったいない」というレベルではなく、経営課題です。
とはいえ、いきなり全社のファイル管理を変えるのは大変です。
まずは一番トラブルが多いファイルを1つだけ選んで、上の構造に変えてみてください。
1つうまくいけば、「他のファイルもこうしよう」と自然に広がります。
クラウド化が「正解」とは限らない
「Googleスプレッドシートに移行すればいい」とよく言われますが、すべての会社にとってそれがベストとは限りません。
たとえば、マクロを多用しているExcelファイルはクラウドに移行すると動かなくなることがあります。
また、取引先とExcelでやり取りしている場合、自社だけクラウド化しても相手からは従来通りExcelが送られてきます。
大事なのは、「今の業務に合った方法」を選ぶこと。
クラウドが合うならクラウドに、Excelのままがいいならフォルダ構造とルールで対処する。
正解は会社ごとに違います。
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